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センター概要・設立趣旨

アフリカ・アジア現代文化研究センター(CAACCS、Center for Africa-Asia Contemporary Studies)は、2020年4月に京都精華大学に設置された研究センターです。CAACCSでは、アフリカ・アジアに係る研究、実践活動を、大きく分けて3つの視点から進めます。

①アフリカ・アジア研究の課題刷新

これまで、私たちはアフリカ・アジアを学ぶ上で、欧米を経由して学ばざるを得ませんでした。しかし、よくアフリカ・アジアの諸地域を見回すと、そこには、非常に豊かな学術的資産を見つけることができます。私たちは意識的にアフリカ・アジアの人びとが築き上げてきた文化、学術的資産に目を向け、学んでいきたいと考えます。

②未来志向型の実践的研究体制の構築

学術研究の領域では、欧米や日本からアフリカ・アジアを研究することは盛んになされ、アフリカ人研究者が旧宗主国である欧米を研究・批評することが多々ありました。しかし、アフリカと並び急激に変化したアジア諸国とアフリカの間での相互研究の機会は極端に少なかったと言えます。私たちは、近年ようやく始まったアフリカとアジアの間の研究交流を一層進展させ、両地域の文化交流の橋渡しをすることを目指します。

③市民協働型の研究・実践体制の構築

現代文化は人びとの日常的な実践の中で培われていきます。日常の中で作られ、消費される現代文化は、大学という閉じた空間の中に閉じ込められるべきものではなく、市民に開かれた空間で高められる必要があります。私たちは、現代文化を大学の垣根に捉われずに作り出す媒介者としての役割を果たしていきます。

アフリカ・アジア現代文化研究センター設立に際して

2020年4月に晴れて京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センターが発足しました。

アフリカ大陸をどのように捉えたらよいのか?アフリカとアジアの関係史や世界秩序をはじめ、それらの地域の文化的経済的つながりをどのように捉えれば良いのか?

様々な分野で頻繁にこの問いに遭遇します。将来を見据えるなら、アフリカの人口は今後も爆発的に増加し、2050年までには世界人口の4分の1を占めるのみならず、その半数以上は18歳未満になると考えられます。そして、増加する世界人口の大多数はアフリカやアジアの都市部に居住すると予想されています。地球の未来を左右する存在にもなるアフリカをどう理解すべきか、また世界各地域、とりわけ同様の条件を備えるアジアとの関係はどのようなものになるのかが重要な課題となるでしょう。アフリカ諸国の過剰な都市化、格差などの現象が生み出したのは、経済格差だけでなく、いわゆる「規範的基準」(フォーマル)で行われない経済活動の長期化と定着化、つまりインフォーマルセクターの拡大であります。アフリカ社会の経済現象を見ると、80%がインフォーマルセクターと言われ、20%のみがフォーマルな経済活動と言われています。これまで、アフリカ地域のこれらの現象を捉え、解釈される際に、西欧的な規範を基準(仮に「規範的基準」と呼んでおきましょう)としたアプローチが多く見られます。つまり、如何にインフォーマルをフォーマルに近づけるかが主流な研究や分析方法でした。しかし、「インフォーマルセクター」こそが、これらの地域で最も適する経済システムだと、なぜ考えられないのか、との疑問が湧いてきます。アジアには、アフリカより先に独自規範で文化、芸術、経済を発展させてきた経験があります。アフリカにおいては、規範的基準で観ようとされているのは経済だけでなく、芸術、音楽、ファッション、文学などに及びます。ありとあらゆるモノの価値基準が旧宗主国、つまり西洋的文明の規範で見られているのです。アジアに様々な文明史・文明論があるように、アフリカ大陸にも様々な文明史・文明論が存在しました。さらに、アフリカとアジアを繋ぐ歴史的な軸としても様々な文明論が議論されてきたかと思われます。しかし、現代アフリカやアジアをとらえる際に、それらの歴史的事実から分断されることが多いように思います。世界の歴史、秩序から分断できないアフリカとアジアを研究することで世界の新たな秩序を描くことができるかも知れません。

日本におけるアフリカ研究の歴史は長く、すでに60年以上に及んでいます。その内容は、人類学をはじめとして様々な領域に広がっており、各領域において一定の成果が挙げられています。アフリカが抱えている諸々の課題についても、フィールドワークと分析が同時に進められ、様々な表現方法でその成果が発表されることによって、世間でもアフリカに対する認識は深まってきています。しかしながら、こうした豊かな研究の積み重ねにもかかわらず、現在の日本では、そして将来を視野に入れたアフリカの位置づけはいまだ不明確であります。世界の変化とともに、アフリカもまた、その政治的、経済的な立場を変えてきました。世界が期待するアフリカの役割も徐々に変化し、アフリカはそのつど期待に応えてきたものの、かつてのアジアのように、世界が思い描くアフリカとアフリカの自己認識との間には、なおもギャップが存在しています。

本センターは独自の研究方法やアフリカ地域研究学派を作るために発足されたわけではありません。日本にある豊富なアフリカ研究の成果を踏まえつつ、アフリカとアジアまた諸地域とのつながりを視点変えて捉えることを活動の主軸としていきたいと思います。これらの地域の独自性や地域間の課題、世界秩序などをこれまで存在するアプリオリの規範的基準で見るのではなく、その地域の視点から様々な現象、とりわけ現代文化を捉えていくことにします。それによって、人、モノ、情報の距離が狭くなっているグローバル社会にとって、新たな道筋を示すヒントが得られることを期待しています。また、アフリカとアジア地域の現代文化を主軸に捉えることで、これまで見えなかった新たな社会創造につながれば何よりです。アフリカとアジアの現代文化を新たな視点から見つめ直す作業が必要です。これまでの地域研究が採ってきた視座に加えて、同時代のアフリカやアジアを検討し、その価値を再発見するための視座を加えていくことが重要です。

本センターは京都精華大学のリソースだけで研究活動を展開することができません。そして、アフリカ、アジアの動態は一つの大学のセンターに捉えられるようなものではありません。アフリカやアジアの現代文化に関心を持つ研究者や、国内外の研究機関と共同で研究活動を進めていきたいと思います。このセンターは、現代アフリカやアジア、またそれらの現代文化の研究において、活発な議論ができるプラットフォームを提供することが一つの使命だと考えています。学際的かつプロジェクトベースでアフリカ・アジア現代文化の様々な研究課題に取り組んで参りたいと思っておりますので、ご遠慮なくお声をかけていただき、未来を創造できる研究活動をご一緒に展開していきましょう。このセンターから、さらなる研究が展開できれば、望外の喜びです。

(CAACCSセンター員一同)