現コロニアリティと社会的実存
掲載日程:2025.05.24代表者氏名
鈴木 赳生
活動の目的
多文化・多民族が入りまじる社会状況に満ちた現代世界では、「多様性」が創造の原動力などと価値づけられる一方で、 異なる者同士の深い対立もまた浮きぼりになっている。この困難な状況に対してすでに、「共生/共存」や「多文化/異文化」を キー・ワードとした分野横断的な知が蓄積されてきた。だが問題は、その大部分が、対立の大元にあるコロニアリティ (いまも継続する植民地統治の影響)を十分に認識できていないか、有意義な形で記述・分析に組みこめていないことである。 これに対して本研究は、第一に、現代の対立状況がどのように植民地統治からうみだされているかを探究する。 しかし他方で、人々の生活を植民地統治の影響のみから決定論的に説明してしまっては、そのただなかでよりよい生を求めて創意工夫をこらす人間的営みがみえてこない。 そこで第二に、本研究は社会的実存、つまり不自由な現実のなかでも生きがいのある社会生活を築く人間の姿に光を当てる。 このプロジェクトは、人間文化研究機構「グローバル地中海地域研究」同志社大学拠点でも同名で展開している。
メンバー
鈴木赳生、西尾善太
*上記2名を主宰者として、都度、若手研究者を中心に招聘をおこなう。
これまでの業績
1.調査
・Syed Farid Alatasへの鼎談インタビュー(2022.10.21)
・プサン・ソウル現地調査(2022.10.26-29)
・バギオ現地調査(2023.8.22-29)
2.研究会
・Affect, Narratives and Politics of Southeast Asian Migration
(Routledge, 2021) 書評会(Carlos M. Piocos III、西尾善太(書評)、2022.4.22)
・研究報告「南部フィリピンにおけるムスリムとキリスト教徒の『共棲』―日常実践、地方政治、自治地域設立プロセスからの考察」(吉澤あすな、2022.7.15)
・『不揃いな身体でアフリカを生きる』合評会(仲尾友貴恵、2022.9.21)
・研究報告「コロニアリティの発見と謝罪・負の遺産化・脱植民地化―博物館の実践と舞踊の流用に対する先住民マオリの主張」(土井冬樹、鈴木赳生・中村昇平(コメント)、2022.12.19)
・研究報告 “Testing Atomic Empire: The Lucky Dragon, the Marshall Islands,
and Castle Bravo's Fallout”(Brenton Buchanan、2023.3.14)
・パレスチナ映画上映会(鈴木赳生・西尾善太、2023.11.25)
・研究報告「現地語を真剣にとらえる――『社会』の振れ幅」(吉田航太、鈴木赳生(趣旨説明)、2024.2.13)
3.成果発表
・土井冬樹,2023,「コロニアリティの発見と謝罪・負の遺産化・脱植民地化 :
博物館の実践と舞踊の流用に対する先住民マオリの主張」『インターセクション』(1): 5-23.
・サイエド・ファリード・アラタス,鈴木赳生,西尾善太,2023,「自律的な知を求めて――ファリード・アラタスとともに」『インターセクション』(1):
25-43.
・Syed Farid Alatas, Takeo Suzuki, Zenta Nishio, 2023, “Voyage to
Autonomous Knowledge, with Farid Alatas” CSEAS Newsletter, (80): 29-34.